モナコのカラー舗道に魅せられて |
信号器材が、舗装道路のカラー化事業に乗り出した原点は、バチカン市国に次ぐ世界第2位の小国、モナコにあったと遠藤芳郎社長は打ち明ける。
F-1グランプリが開催されるモナコは、カラー舗装の先進国でもあった。これからの舗装は、カラフルで視認性が高く、耐磨耗性に優れ、排水性もなければならない、と知らされたのだ。それが信号器材の溶融噴射式路面カラー塗装「ミストグリップ」製品化のきっかけとなった。
特徴は、
・排水性舗装に塗布しても透水機能を保つ
・施工後の養生期間が短くて済み、交通への影響が軽微
・磨耗ヶ所のリメイクが容易
・従来の塗装方式に比べてすべり抵抗が高い
などである。
色の種類はベンガラ、黄、深緑、緑、青、黒の6色。実際の施工例は、第二名阪道路湾岸長島ICのレーン誘導、東京都新宿区二丁目交差点を赤色に塗って違法駐車対策に、川崎市では自転車道を青く標示して歩行者と区別し、カラフルで分かりやすいとの評価を得た。 |
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舗装面に塗装しても透水性確保 |
しかし、舗装表面に色を塗ってしまえば、雨水ははじかれて浸透性が失われる。ではどうやって塗装するかというと、「ある一定の厚さを確保しながらその場で樹脂を溶融しながら噴射する」というものだ。
舗装道路の塗装は通常この噴射方式とスリッター方式と呼ぶなすりつけ方式とがある。スリッターは従来からある標準的な塗装方式ではあるが、カラーの塗装樹脂ではなかなくうまくいかなかった。そこで噴射方式に切り替えることにした。
「ミストグリップ」の推進役である営業本部新製品推進事業部長の前島敏雄執行役員は、「会社の敷地内に実際に舗装道路を作り、毎日、試行錯誤を重ねた結果ようやく、どの温度で、どう運転したら、最良の塗膜ができるのか、最適な条件が発見できた」と、当時の苦労を振り返る。この厚みこそが耐磨耗性や透水性確保に大きく影響する。0.1mm単位の狭めぎあいの世界でもある。
また、塗膜となる樹脂にも秘密がある。基本的には、石油樹脂、石灰岩、ガラスビーズ、セラミックで構成するが、材料のブレンド比は企業秘密で、さらには、セラミックの粒子の大きさも大きなポイントとなっているという。 |
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施工後5分以内に道路を開放 |
自動車を運転していてイライラするのが渋滞。特に道路工事による渋滞は年度末の恒例となっているが、道路利用者にとっては大迷惑のひとつだ。「ミストグリップ」はこの点もできるだけ短時間で工事が終わるように工夫した製品である。
通常、道路に色をつける場合は、ペンキを塗るか、接着剤を塗ってからその上に色付きの骨材を塗る方法がある。乾いて道路を開放するまでの時間は、ペンキの場合は20分から40分。接着剤とカラー骨材の場合は6時間程度かかるという。これに対して「ミストグリップ」は、施工後3分から5分の短時間で交通遮断を開放できるのが特徴だ。 |
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施工と材料販売の両建てで |
「ミストグリップ」は製品名であるとともに製法名でもある。同社は施工工事を請け負うと同時に、全国の舗装関係会社に、「ミストグリップ」の製法と材料、機材を販売している。60%が材料販売で占めている。機材のリース販売も実施している。
このため「ミストグリップ」が施された道路は関東、中部地方を中心に仙台から福岡まで全国各地に普及しつつある。
国内だけではなく、韓国のソウル市の道路関係者が来日して、高い関心を示して帰っていったという。
モナコのカラー舗装が日本だけでなく、アジア各国で花開こうとしているようだ。 |