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ビデオデッキの開発競争が激しく行われていた1980年代、磁気ヘッドの回転ムラや磁気テープの走行のムラの発生が大きな課題となっていた。当時はロータリ・エンコーダなどの接触式の計測手段しかなく、非接触で精度の高い回転速度の計測手段が求められていた。そのニーズにこたえるため、1985年にアクト電子(株)が創設され、約4年の研究開発を経て1989年に、光のドップラ効果を応用した最初の非接触型のレーザ・ドップラ速度計の販売が開始された。
ドップラ効果とは、音波や光や電磁波などの「波」の発生源と観測者との間に生じる相対的速度に対して観測者が受け取る波の周波数が異なる現象であり、身近な例としては、救急車が近づいてくるとサイレンの音がしだいに高い音になり、遠ざかるとサイレンの音が低くなる現象が挙げられる。
一般的なドップラ振動計は単ビームにより移動体の移動方向と波の方向が同じ状態で測定するが、当社のレーザ・ドップラ速度計は、移動体の移動方向に対して、横(進行方向に対して約90度の角度)から照射されるレーザービームのドップラ効果を応用する。そのために開発されたのが「差動型光学系」と呼ばれる独自の測定方法であり、レーザー光を二つに分け、一つのレーザー光は移動体の前方から、もうひとつのレーザー光は移動体の後方から照射し、移動体から反射する散乱光によるドップラ効果から速度を計測するものである。
このレーザ・ドップラ速度計による速度測定や変位測定は、@非接触であり非測定物への物理的影響がないため、それまで接触式の手法では測定できなかった対象の測定ができる、
A鉄・非鉄金属・各種の樹脂・木・紙・布・ガラス・セラミックなど、散乱面であれば素材を選ばず測定ができるとともに、表面が印刷されたものや様々な色で塗られたものも測定ができる。
B散乱光の中から速度情報を取り出すため、厳密なアライメント調整が必要なく、被測定物がセンサの被写界深度の中にあれば測定ができる、といった特徴がある。
当社のレーザ・ドップラ速度計の導入により、これまで測定解析できなかった分野の現象を数値化できるようになり、多くの製造業において、開発時間の短縮、歩留まりの向上、省エネルギーなどの成果を挙げている。また導入事例としては、鋼鉄業では、圧延工程で正確な速度測定から圧延速度のコントロールが可能となり、製紙業やフィルム業では、ロールの滑りや回転速度ムラなどを測定することで、製品の歩留まりと品質の向上に活かされているなどがあり、加えて、衝撃吸収量の測定、押出成形速度の制御、ベアリング回転欠落検出といった幅広い分野で導入されている。このレーザ・ドップラ速度計は、まさに日本の高品質のものづくりを縁の下で支えている製品であり、今後様々な用途に広がることが期待される。
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