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デザイン製品の世界では、クラフト品・工業製品といった「ジャンル」や、デザイン・製造・販売といった「プロセス」などの垣根が無くなってきている。アイデアをカタチにするには様々な領域で動かなければ実現できないとも言い換えられる。
佐野デザイン事務所代表の佐野氏は、インダストリアルデザイナーとして数々の商品企画・デザインを手がけてきたが、いつかはデザイン〜製造〜販売まで一貫して手がけてみたいと考えていた。自社製品としてお香立てやキャンドルスタンド等のデザインアイテムを開発し好評を博していたが、もっと安価で気軽に購入でき、誰でも楽しく使えるものを作れないかと思うようになった。
デザイン緩衝材を思いついたきっかけは、とある展示会に出展した際だった。会場にはギフト商品が数多く並んでいたが、これらの製品の価値や魅力を更に高める、デザイン性の高い緩衝材を作ることができるのではないか、と閃いた。
さっそく手作りで緩衝材サンプルを作成し別の展示会に出展したところ、アイデアやデザインがとても好評でリアルな手応えを感じるとともに、実現化に協力してくれる企業と出会った。
緩衝材用のウレタンフォームは、加工のために刃を当てると意図しない変形をする柔らかさがある。複雑な形を高い精度と効率を両立しながら切り出すことは当初困難であった。試行錯誤した末に材料にムダが出ない加工技術と結びつき、こだわりのデザインを製品に落とし込むことが可能となった。
このようにして出来上がった「クッションサン」のデザインモチーフは「人」。ギフトは人が運ぶ、運ぶ人が笑顔だとギフトの貰い手の気持ちもより高まる、コミュニケーションの1つという想いを込めている。
また、エコへの配慮にもこだわっている。枠や切りしろなど出来るだけロスが発生することなく「人」の形が連続する、歩留まりの高いデザインが「製造時」でのエコへの配慮。また貰った人が捨てたくならないユーモラスなカタチ、繰り返して使いたくなるのが「使用時」でのエコへの配慮だ。
それを消費者に分かりやすく伝える工夫として、一つだけ違う色に組み替えてパッケージするなど、デザインから製造・販売まですべてに関わり、自社ブランド製品として責任を持つことにより、デザイナーとしての視点だけではなく、作り手・売り手・そしてユーザーである贈り手、貰い手まで意識したものづくりを実現している。
ユーザーからは「かわいいので、ギフトと一緒に取っておきたくなる」「再利用したくなる」「クッションサン同士がきっちりはまる形状なので、子供がパズル遊びを楽しんでいる」との声が寄せられ、狙い通りの効果を実感している。
2011年に販売を開始して以来、洋菓子店や雑貨店でのラッピングに用いられているほか、東急ハンズなどで一般消費者向けにも販売されている。特に東急ハンズ横浜店では、バレンタイン・母の日・父の日などに特設コーナーが設けられるほどの人気商品である。
形状や素材に工夫を加えた豊富な製品バリエーションも魅力だ。「人」型のほか「鳥」や「葉っぱ」「ハート」などのデザインが揃っており、製品や贈り手の思いに合わせた組み合わせが可能だ。
素材としては、掃除に使えるメラニンスポンジタイプの「クリアサン」も販売中。また、従来のウレタンフォームよりも保管スペースが少なくて済む「紙」タイプも間もなく発売される
デザインがより身近で親しみやすいものになるよう、「クッションサンシリーズ」は進化を続けている。
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